白老空襲

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  • 2020年7月28日

  勤務する白老支局の本棚を整理していたら、戦争をテーマにした絵本が出てきた。終戦1カ月前に起きた米軍の白老空襲を描いた作品で、作者は旧白老小の元教師だ。

   1945年7月14日午前9時40分すぎ、海の方から飛んできた数機の艦載機が学校や周辺地域に機銃掃射を仕掛けた。幸い児童は登校しておらず、出勤していた教師らも草むらに身を隠して無事だったが、木造校舎はひどく破壊された。学校さえも標的にする無差別攻撃。絵本をめくりながら戦争の非情さが胸に突き刺さった。

   この日の恐怖を体験した人たちが現在も旧白老小近くに暮らしている。山丸利太郎さん(85)もその1人だ。当時10歳の少年は自宅そばの防空壕に飛び込み難を逃れたものの、低空飛行からの機銃掃射のすさまじい音がいまだ忘れられない。戦後、校舎解体作業に携わった際、大量に見つかった弾を目にし、改めてぞっとしたという。

   白老空襲を知る地元の子どもたちは今、どれほどいるだろうか。学校では扱っておらず、教科書で太平洋戦争の概要を教えている程度。空襲に遭った他のまちも同様だが、学校は体験者の生の証言を生かし、郷土と戦争の関わりをもっと伝えるべきではないか。遠い記憶ではなく、身近で起きた出来事として学ぶ授業を組み込んでほしい。75回目の終戦記念日が近づく。平和教育のありようも考える機会としたい。(下)

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