イランカラプテ(こんにちは)。これからの社会を担う子どもたちにアイヌ文化を知ってほしい。そのためにまず、アイヌ文化を学ぶ入り口として、かつてアイヌ民族の子どもたちが楽しんだ遊びを、現代の子どもたちにも体験してほしいと思うのです。
例えば、ヤマブドウのツルを使い、アイヌ語でカリプと呼ばれる「つる輪」を用いた遊びや、弓矢でシカなどの動物を模した的を射る遊びは、アイヌ民族の子どもたちが狩猟や漁労、植物採取など生活に必要な知恵、技術を身に付けるためのものでした。しかし、現代の子どもたちにとっては、こうした遊びが新鮮に映るようで、しらおいイオル事務所チキサニの体験行事では、夢中になって遊ぶ姿が見られます。
さて、白老アイヌのエカシ(長老)によれば、子どもの頃によく遊んだのはジングリだといいます。主にサクラなどの木をマキリ(小刀)で削り、その円すい形の形状はこまを連想させますが、いかに長く回り続けるか、作り手によってその形状は微妙に異なり、創意工夫が込められているのです。遊ぶ際には、棒の先に結んだひもをジングリに巻き付け、棒を勢い良く引くことでジングリが回転します。回転が遅くなると、棒に結んだひもをむちのように使ってジングリの側面をたたいて回し続けるのです。
チキサニでは、小学生を対象に夏休み工作体験としてジングリ作りを行ったことがあります。行事に参加した大半の子どもたちがマキリを使うのは初めてで、使い方に苦労したり、危なっかしかったりする場面も多々あります。このため、大人のサポートも必要とするのですが、子どもなりにマキリの使い方と危険性、便利さを学び、一人一人がオリジナルのジングリを完成させ、達成感に喜びを感じている様子でした。
また、ジングリ作りの指導に当たったエカシから、かつてジングリを回しながら競争して駆け回ったというエピソードや、昔の白老の様子などを語ってもらいました。エカシと交流しながらジングリ作りとその遊び方を教わった白老っ子たちは、ジングリを少しでも長く回し続けようと夢中でした。アイヌ文化の正しい理解へとつながる学びの入り口に立ってもらうことができた―と考えています。
(しらおいイオル事務所チキサニ・森洋輔学芸員)
※毎月第2・第4月曜日に掲載します。