距離

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年7月18日

  正月、孫たちが帰省した騒乱の中で、夏の再会を思い描いていたものの、新型コロナウイルスが日本に上陸して思惑はすべて帳消しになってしまった。

   あれから半年。今では世界中で1380万人以上が感染し、死者数が60万人に近づいている。リーダーが経済優先を掲げ、マスクを着けたり外したり揺れるアメリカが感染者数世界一。「風邪のようなもの」と豪語、自らも感染が報道されているブラジルが2位。

   日本も全世帯にマスクを配布して不評を買ったり、国民全員に10万円ずつ特定定額給付金の支給を決めたりと揺れる。その支給作業も進んでいない。先月下旬の全国紙の見出しによると大都市が特に遅く、大阪市3%、千葉市8%とか。まさかと思いながら12日、知人に聞いてみるとまだだった。

   観光産業の業況回復を目指し、宿泊料金の一部を補助して国民に旅行を呼び掛ける「Go To トラベル」キャンペーンも22日のスタートを目前に大揺れ。東京の感染者が急増、対象地区から除外するなど見直しに大わらわだ。

   「夏休みは、おばあちゃんち、行くよね」。首都に住む、わが家の小学生の孫がぽつんと言い出して、説明に苦労しているそうだ。弟の幼稚園児は、心が瞬時に宇宙へ飛ぶ。ウイルスでも見つけたのかスマホ画面で戦闘の構えを取り何かをにらんでいる。「冬にはね―」とも言い切れず、家族間の距離だけが着々と広がる夏。(水)

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