直木賞

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  • 2020年7月16日

  新型コロナウイルス感染予防のための自粛で、やむなく抱え込んでいたうつうつ感。これを一気に発散してくれる朗報が、きのう突然飛び込んできた。苫小牧東高校出身の作家、馳星周さんの直木賞受賞だ。

   1996年のデビュー作「不夜城」で初めて候補になって以来、7度目で受賞した。過去に馳さんと一緒に候補に挙がり、受賞した作家には宮部みゆきさんや京極夏彦さんがいる。今も活躍中の実力派で、同賞の権威、受賞の難しさがよく分かる。

   受賞後のインタビューでは「20年間小説家をやってきたことの、ご苦労さんという意味もあると思う」と語っていた。候補になっては受賞を逃す。そんな経験を30代から重ねた馳さんにとって、直木賞は結果としてついてくるものになっていた気がした。ある時点から文学賞というものと別の次元で自作の追求に専念し、浮き沈みの激しい世界で常に認められる作品を一つ一つ生み続けてきたように感じた。

   記者は高校時代、馳さんも通う校舎で学んだ。学年は一つ違い、面識もないが、卒業後、同じように文章を書く仕事を続けてきた者として、受賞は単純にうれしかった。2010年にノーベル化学賞を受賞した大先輩、鈴木章さんに続き、直木賞作家まで母校に生まれたことも誇らしい。受賞作「少年と犬」の入手はすでに難しそうだが、ぜひ読むつもりだ。(林)

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