視察

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  • 2020年7月15日

  「ぜひ現地を見てほしい。○○が来てくれた―」。そんな地元の要望や評価もあるからなのだろう。大災害の発生時には、政治家らの視察が行われる。

   いつも思い出すのは、以前に取材で見た豪雨被害を受けた自治体の忙しさだ。警察や消防が中心になる人的被害の対策がヤマを越せば次は道路や橋などの復旧の準備作業だ。数日後には、現地視察の「大名行列」も動きだす。復旧には予算が必要だから、しかるべき上級官庁の査定が必要なことは分かるが、大臣らが動けば、その受け入れ準備に忙殺されるのも地元だ。慣れない現業服を着た一行に失礼のないよう作業を進める。

   視察者の地位の高低と取り巻きの数は比例する。食事や休憩の対応も含めれば作業量は膨大だ。最近では、長靴を忘れて被災地の人に背負われた視察者が処分されたことも報道されていたから往時とは違うのかもしれない。ご一行の視察中、豪華な内装のバスに紙袋が運び込まれるところを見たことがある。中身は地元の特産品なのか。教えてはもらえなかったが何年たっても不快感は消えない。

   それにしても大災害が毎年のように続く。地震や大雨、土砂崩れ―。九州で始まり本州に広がった大雨は、間もなく2週間になる。「水の出方、増水の速さが変わった」と被災地の高齢者がテレビ画面で嘆いていた。では被災地が頭を下げなければならない政治や行政の仕組みは変わったか。(水)

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