東京都を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大傾向にある中、民族共生象徴空間(ウポポイ)が開業した白老町の住民の間でウイルス感染リスクの高まりを憂慮する声が広がっている。これから本格化する夏の北海道観光で、ウポポイがオープンした白老町に立ち寄る観光客の増加が予想される中、「町を挙げて感染防止策を」と求める町民は少なくない。
「ウポポイの開業はうれしい。その半面、感染拡大地域から他の地域への移動制限がない中で、もしウイルスが町に入ってきたら」。ウポポイに近い同町東町の男性(79)は不安げな表情でそう話した。
男性が住む地域の町内会は今年、夏の盆踊りやラジオ体操など行事を次々に取りやめた。新型コロナ感染を恐れてのことだ。「地域に高齢者が多く、新型コロナをみんな怖がっている。東京などで感染者が急増しているタイミングでウポポイが開業したため、いっそう不安を募らせる住民は多い」と明かした。
白老中心部の大町に住む男性(68)は「正直なところ心配だが、町の活性化につながるウポポイも大事だ」と複雑な心境を語った。
鉄北の末広町に居住する男性(73)も「東京など本州方面の感染者数の動向が気になっている。これから本格化する夏の観光シーズンで人の移動が盛んになり、同時にウイルスが入って来ないとも限らない」と懸念。政府が22日から実施する観光需要喚起策「GoToキャンペーン」で北海道観光が後押しされ、白老町でも感染リスクが高まることを憂慮し「ウポポイに限らず、観光スポットを抱える白老はまちを挙げて対策に力に入れるべきだ」と話す。
オープン初日の12日、約2000人の来場者を数えたウポポイは、事前予約制による入場制限や施設内消毒、一部体験プログラムの見送りなど感染防止策を講じ、安全性の確保に努めている。一方、東京の新型コロナ感染者が12日までの4日連続で200人を超えるなど、国内各地で増加傾向にある中で町は「ウポポイにはこれまで通り、しっかりとした対策を進めてもらい、町としても観光客が安心して白老へ訪れることができるよう対策に努めたい」とする。
町内会連合会の吉村智会長は「観光客の誘客と感染防止策の両立をどう図るかが重要だ」としながらも、65歳以上の高齢者が町の人口の半数近くを占める実情を踏まえて「行政など関係機関は地元町民の命を守り、安心感を抱かせるために最大限の努力を払ってほしい」と求める。