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  • 2020年7月13日

  白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)が開業した。道内唯一の国立博物館「国立アイヌ民族博物館」を中核施設に、アイヌの歴史や文化を展示や体験プログラムなど多様な手段で伝える。

   11日の開業記念式典には、国から菅義偉官房長官、萩生田光一文部科学相、青木一彦副国土交通相が出席した。この式典をめぐっては内閣官房、文科省、国交省から別々に取材申込書が送られてきた。30分足らずの同じ式典取材に、なぜ三つの省庁にそれぞれ申し込まなければならないのか。そもそもなぜ国の許可が必要なのか。

   さらに萩生田氏は式典前日、「原住民と開拓者の間でさまざまな価値観の違いはあったと思う。それを差別という言葉でひとくくりにすることが、アイヌ文化を伝承していくためにいいかどうかはちょっと考えるところがある」と述べた。後日軌道修正したものの「多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、我々は厳粛に受け止めなければならない」とする政府の「アイヌ施策の基本的な方針」を理解しているとは思えない。

   ウポポイに対する国の姿勢には疑問を感じるばかりだ。国の目標は、100万人の来場者を達成することではない。アイヌを初めて先住民族と明記した法律に基づき、歴史的事実を伝え、アイヌの誇りが尊重される共生社会を実現することにあるはずだ。(吉)

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