原作は、戦争時代の故・向田邦子さんが家族との思い出をつづったエッセー「眠る杯」。戦渦に巻き込まれ、多くの子どもたちが、学童疎開を強いられました。爆弾は飛んで来ないけれど、つらく、寂しい田舎での生活です。
向田さんの妹は、文字も書けないくらい幼かったのに、家族と離れ、遠い田舎へ行きました。自由に帰って来ることもできません。また、疎開をさせなければならなかった両親の苦悩に胸を打たれます。数え切れないほどのはがき全部の宛名に自分の住所と名前を書き、旅立つ幼子に持たせたお父さんの切なさ…。
戦争を知らない私たちに、家族が一緒に生活できる、平凡な日常がどれだけ幸せなことなのかを教えてくれます。語り合い、伝え合う大切な時間を提供することができますように。
(小学館 税込み1650円)
苫小牧市立北星小学校 平野ゆかり