―ウポポイで働くきっかけは。
「親が日常的にカムイノミ(儀式)などアイヌ文化の伝承活動に取り組み、子どもの頃から自然と参加していました。大人になってから儀式に参加していると、周りから質問されるようになりましたが、アイヌ文化を深く知らないことに気が付きました。伝承者(担い手)育成事業に参加し、旧アイヌ民族博物館に就職しました」
―どのような準備をしてきましたか。
「工房で行う体験プログラムの企画や準備をしてきました。職員がアイヌ文化を伝えるため、技術や知識を伝承することが大事ですが、時間がない中でどこまで身に付けることができるかに苦労しました。工房の木彫担当は4人いますが、自分は経験者として指導もしました」
―アイヌ文化を伝える上の苦労や工夫は。
「アイヌ文様は生活の中で使える物に施します。『日常の中でアイヌ文様が使われたら』『作ったものは大事にしてもらいたい』という思いから、木製のスマホ(スマートフォン)スタンド制作も考えました。博物館で展示している物を触ってもらったり、職員が制作時の思いや苦労を話したりすることで、生きた文化として伝えられるように―と考えていました。新型コロナウイルス感染予防で、木彫の体験はできなくなりましたが、解説などを通して工芸の魅力を伝えたいと思います」
―ウポポイで自分が伝えたいこと。
「アイヌ文化は過去のものではなく、現在まで続いていることを伝えたい。アイヌに限らず、多種多様な民族や人々が暮らしている。それらに偏見を持つことがない社会になってもらいたいし、気付いてもらえるきっかけの一つになれたらと思います。私は工房でお客さまに接するので、手仕事の魅力、物を作る難しさなど知ってもらい、アイヌ文化に興味を持ってもらえたら幸いです」