5月中旬、苫小牧市在住の日本野鳥の会(以下当会)会員の奥山博美さんから、「勇払原野に足環(わ)の付いたオオジシギがいた」というメールがありました。添付された画像には、右脚に無地の青いフラッグ(プラスチックの板)、左足には金属製の足環が付いたオオジシギが写っていました。これは寿命や長距離の移動について情報を得るため、当会が2016年に勇払原野で足環を装着した108羽のうちの1羽でした。
早速、私たちレンジャーは現地で足環の番号を読むことを試みました。その初日、幸先よく足環付きのオオジシギが近くの電柱のてっぺんに止まったのです。己の運の良さに驚きつつ、カメラのシャッターを押しました。が、しかし、オオジシギが止まった電柱は、高さが6メートル前後あるので、私たちからは見上げる形になり、角度的に脚が写らないのです。左脚に装着された足環は、縦の長さがわずか約7ミリ、そこに約2・5ミリの英数字7桁が並んでおり、この番号を野外で読み取るのは相当難しいなということを実感しました。
足環撮影4回目の前日には、カメラの操作に詳しい当会のレンジャーにコツを教えてもらって臨みました。この日も運よく足環付き個体が電柱に止まり、「56」という数字が画像で確認できました。ところが足環の記録簿を見てみると、同じ56の数字の並びを持つものが49羽も…つまりこれでは個体識別はできません。
私自身のカメラで撮影する限界を感じ、焦り始めたところ、(株)ニコンイメージングジャパンから、超望遠レンズのデジタルカメラをお借りできることになりました。満を持して出かけた5回目も足環付きのオオジシギが現れ、もうこのチャンスは逃したくないと思ったその時、思いが通じたのか、なんと青いフラッグが付いた右脚を上げたのです。こうしてついに、左脚の内側の撮影ができ、個体識別のカギとなる数字を確認できたのでした。
このオオジシギは2016年生まれのオスであることが分かり、越冬地のオーストラリアなどとの間を4往復していたのだろうと推測できました。オオジシギにとって、勇払原野はふるさとであり、この環境は今後も守りたいと、改めて感じた出来事でした。
(日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・ネイチャーセンター 善浪めぐみレンジャー)