出発点

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年7月1日

  アメリカで、黒人が警察官の膝で首をつぶされ殺されて1カ月が過ぎた。抗議する黒人など有色人種と差別の歴史を恥じる白人のデモが広がっている。

   ラジオで歌手・ミーシャさんがクレヨンの「肌色」の名前が変わっていることを教えてくれた。まったく知らなかった。若い同僚に聞くと「初めて聞きました」。孫の落書き用のクレヨン箱には「ペールオレンジ」の小さな文字。インターネットで調べると「うすだいだい色」の名前もあった。変更は、かなり前のことのようだ。

   飲料水のラベルの黒人の図柄やビニール人形「だっこちゃん」をめぐる報道を読んだ記憶がある。しかし幼時に覚えた肌色の名が、誰かを傷つけるものと想像したことはなかった。きのうの全国紙朝刊、読者の声欄で、父親がナイジェリア人のプロ野球楽天・オコエ選手の記憶が紹介されていた。保育園の先生が「みにくいアヒルの子」を読んだ時には周りからジロジロと見られ、笑われて、うつむいて耳をふさいでいたという。知らないこと、想像しないことの残酷さ。それが、無意識に次の世代に引き継がれていく恐ろしさ。

   7月。白老町のウポポイ(アイヌ民族文化発信拠点・民族共生象徴空間)が12日、開業する。道内の地名の多くが先住民族アイヌの命名に和人が漢字を当てたものであることなど、身近なところから北海道の歴史を学び、考える出発点になれば。改めて思う。(水)

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