(14)共闘 外部コーチの人間力実感 常に相談しチームづくり

  • 特集, 私と苫小牧 アイスホッケー
  • 2020年6月27日
釧路ロータリーカップ大会でベンチから戦況を見る。左から城野さん、本人、今尾さん(いずれもジャンパー着用)=2016年11月、釧路市

  「先生にぴったりな人がいるんですけど」―。苫小牧東赴任2年目の2008年、アイスホッケー部の外部コーチを務めてくれていた元王子製紙FWの飯塚祐司さんがおもむろに声を掛けてきた。彼はその頃から女子日本代表の指導で多忙になり、練習を満足に見られなくなっていた。

   私は苫南、苫西の両校で計19年、アイスホッケー指導をたった一人でこなしてきた。慣れてはいたが、赴任当時38人もの大所帯だった苫東を率いるのはさすがにひと苦労で、飯塚さんの言葉に甘えることにした。

   王子の後輩に当たる今尾佳佑さんを紹介してくれた。00年の北海道大会を初制覇した釧路緑ケ岡高出身のDF。苫西赴任時にプレーを見たことがあるくらいで、面識はなかった。初対面は08年5月の大型連休中に行った泊村合宿。勤務明けにはるばる足を運んでくれた。現役時代はアグレッシブな選手だったと記憶していたが、なんとも温厚で親しみやすい人柄。ここから12年にわたる共闘がスタートした。

   オフェンス(攻撃)、ディフェンス(防御)といった明確な指導分けはしなかった。最初は部員たちにアドバイスしてほしいことを逐一伝えていたが、徐々に「あうんの呼吸」が出来上がっていく。当時の今尾さんは現役を引退したばかりの20代で、プレーをよく実演しながら生徒たちに解説してくれた。早稲田大を卒業してすぐに苫南を率いた私の若い頃を見ているようだった。

   一人で指導していたときは、不安と孤独をとてつもなく感じていた。それがコーチを迎え入れた途端、すべて解消されたことに驚かされた。指導方針や試合に向けた作戦づくり。常に相談しながらチームをつくり上げていく過程が、とても楽しかった。

   12年、もう一人の頼もしいスタッフが力を貸してくれた。釧路工業高から王子製紙入りしたFWで、同チーム監督を務めた経験もある城野正樹さんだ。私が苫南赴任中にコーチをした、全道高校選抜合宿の参加選手の一員だ。1週間近く寝食を共にした彼を高校生指導に引っ張り込んだ。

   実業団仕込みのアイデアをたくさんもらった。競技の世界では私よりはるか上のステージで戦ったにもかかわらず、「生徒にこんなことを教えたいんですが」と必ず私を立ててくれたのもうれしかった。

   二人は私だけではなく、生徒のよき相談相手にもなってくれた。今尾さんは兄貴分のような存在、城野さんはリンク外の振る舞いも厳しく指導してくれる教育者だった。彼らがいなければ母校を13年も率いることはできなかったと思う。改めて感謝したい。

  (構成・北畠授)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。