小さな旅路

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年6月26日

  好天の日中に機上の人となり、上空から景色を堪能。目的地行きの切符を買って寝台列車に乗り、食堂車で料理とビールに舌鼓を打つ―。小職には当面、そうした機会はなさそうだ。

   でも旅することが趣味。春以来、さて、どうしたものかと考えていた。交通機関利用もいいものだが、いつかは自ら運転し、ドライブへ行きたい。日帰り行動圏なら地球岬(室蘭)や、神威岬(後志管内積丹町)の辺りへ足を運べるか―。候補地の眺望を幾つか頭の中に浮かべながら夢想に浸った。

   早く目覚めた日曜に時機到来と思い立ち、約150キロ先を目指して車を走らせた。道行きは順調。トイレの小休止も何度か短く取り、途中の売店で買った弁当を屋外の木陰で食べた。やがて、目的地・えりも町に到着。学生時分、コンブ漁を手伝った家が絶景の岬の突端にあるはず。突然訪ねてみると、あるじと再会はできなかったものの、電話で互いの健在を確かめ合えた。心に残る土地再訪の小さな旅で大きな満足を感じた。

   新千歳空港は4、5の両月、国際線の利用者が皆無という驚きの展開。前の真冬まで各観光地にあれほど来ていた異国からの旅人たちの姿が懐かしいとも感じる。

   新型コロナ感染症を防ぐ用心は全く大切だ。清潔や健康維持、人身間一定距離を保つ旅の新スタイルをつくっていけるか―。今はほぼ道民だけの大地のどこかへ、また出掛けてみようと思う。(谷)

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