6 介護職員 不安を一つ一つ解消 クラスター化阻止に全力

  • コロナ禍の中で 密と向き合う, 特集
  • 2020年6月26日
入所者と笑顔で会話する職員

  入所者の生活を手助けする中で、「密」の回避が難しい介護現場。発熱など感染の疑いがあったり、実際に感染者が出たりした場合の初動対応、シミュレーションに力を注ぐ。苫小牧市植苗の特別養護老人ホーム陽明園の尾野清一施設長(57)は「持ち込まず、持ち出さないための対策を徹底し、あらゆる状況に応じた準備を進めることで、不安を一つ一つ解消している」と話す。

   入所者を約10人ずつのグループに分け、ケアする「ユニット型」で介護に当たり、食事の際なども家庭的な雰囲気が漂う。施設内の換気や消毒、テーブルの飛沫(ひまつ)防止シート設置などできる限りの対策を講じながら、入所者が笑顔で過ごせるよう気配りする。

   宮川博文介護課長(41)は「生活支援をするのに入所者と距離を取るわけにもいかず、これまでの対応を大きく変えるのは難しい」と率直に語る。そこで万が一を想定したシミュレーションを月2回ほど実施。入所者の状態を「感染疑い」「検査中」など4ステージに分類し、施設内も状態別に区分けした地図を作成し、職員の動線をチェックする。他施設からの応援を受ける場合も想定し、入所者ごとに薬や食事、排せつなど介護方法を整理して共有するなどクラスター(感染者集団)化の阻止に神経をとがらせる。

   職員は感染拡大防止へ、施設内で制服に着替えるよう徹底。備品はマスクや医療用手袋、フェースガードなどを十分な量をそろえ、迅速に行動できるよう、防護服の使用方法も確認した。防護服の入手が困難な時には雨具の利用も試してみたが、熱がこもって実用は難しいことが分かった。尾野施設長は「シミュレーションを重ねることで、混乱なく対応できるように準備している」と言う。

   2月末ごろから家族などの面会を制限しているが、宮川課長は「入所者が寂しそうな表情を見せることもある」と明かす。家族との関係性が薄れないように、入所者の近況報告やメッセージを職員が代筆し、顔写真付きで家族に送るなど工夫。今月からパソコンなどを利用した「リモート面会」も始めた。尾野施設長は「入所者が『日常』を継続していけるよう、気を緩めずに対応していきたい」と力を込めた。

 (松原俊介)

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