2018年9月に発生した胆振東部地震からの復旧復興をはじめ、早急に取り組まなければならない課題が山ほどある中、宮坂尚市朗町長の4期目がスタートする。
震災から1年9カ月が経過し、自宅を失った町民が暮らす仮設住宅の入居期限が刻一刻と迫っている。町内では生活再建に向けて一定の見通しがついた人もいれば、いまだ資金面、精神面で不安を抱える人もいる。時間の経過とともに「復興の格差」が生まれつつある被災地ならではの問題が見え始めてきた。
「もう間もなく2年」か「まだ2年」か、一人ひとりの感覚も違う。「恒久的住宅対策の渦中にあり、不安にさいなまれている方も大勢いる」と宮坂氏は語り、「『被災者』というひとくくりではなく、それぞれの人に必要な手当てや支援を講じていかないといけない。町の持っているさまざまな制度をフル活用し、個々の課題に適用したフォローアップをしていきたい」と考える。
「一人も取り残さない」ために、町民にどこまで寄り添い、耳を傾け、良い方向へ導いていけるか。地震で山腹崩壊した被災山林の復旧や基幹産業の活性化、新たなコミュニティーの創出など、さまざまな場面で手腕が試される。
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4期目の公約には、町の復興と同時に、次世代を見据えた若い世代の人材育成も掲げた。1期目から意欲的に取り組んできた移住、定住策をさらに拡充し、町を支える後継者の養成をはじめ、町外からの移住者らが活躍できる受け皿を用意するなど「必要なものに応じた手助けをしていきたい」と検討を進める。
特に震災以降、全国から数々の支援を受ける厚真町。「必ずしも住民票が町内になくても、季節ごとに活動する人が増えることで経済効果も生まれる。復興に関わっていく人のチャンネルが増えたことで発信機会も増え、より厚真町に興味を持って直接足を運んで参画してくれる人も増えると思う」と期待する。関係、交流人口を拡大させることで、被災後再び下降線をたどっている人口減少に歯止めをかける起爆剤に―と考える。増加に転じた地震前のような好循環を生み出せるかにも注目が集まる。
震災からの復旧復興と、新型コロナウイルスの影響による活動自粛や経済の停滞など、4期目が厳しい船出になることは間違いない。逆境をはねのけ、復興への道筋を4年間でどこまで示すことができるか、無投票でかじ取りを託された宮坂氏の真価が問われる。
(胆振東部支局 石川鉄也)