日差しの強さが夏の到来を告げる昼下がり。苫小牧市高砂町の正光寺の広々とした本堂は、風通しが良く涼しさを感じさせる。中高年ら約20人が1メートル以上間隔を空けて座り、僧侶のお経に心静かに聴き入る。新型コロナウイルスの感染予防策で、僧侶がお経を上げる「お勤め」や教えを説く法要も変わりつつある。
緊急事態宣言が解除された5月下旬、同寺が3日間にわたって開いた永代経法要。従来は本堂が檀家(だんか)らで埋まる密閉、密集、密接の「3密」がそろった読経や法話が長時間に及ぶ一大イベントだった。今年は1回当たりの入場者数を制限し、読経のみの40分程度ずつにとどめて開いた。マスク着用や手指消毒など一般的な対策に加え、法話は紙に印刷して配り、焼香も中止するなど、慣例よりも対策を重視。気配りや負担も多いが、合理的に対応した。
吉井直道住職(28)は「お寺に直接来てもらってお経や話に耳を傾け、体全体で味わってもらうことが、もちろん大事」と前置きしつつ、「話の内容を紙で配れば、自分のペースで読める。『勤めない』わけではない。コロナがあるまで正直考えたことはなかったが、時代によって変化しないと」と朗らかに説明する。変えてはいけないものもあるが、時代と共に変えていいものもある。長い年月を積み重ねた寺院だからこそ説得力がある。
法話の紙と一緒に廃ろうそくで手作りしたアロマキャンドルも配られた。寺のろうそくは常に新品を使うため、本来は使えるものも捨てていたが、60~70度で湯せんして溶かし、クレヨンで着色してエッセンスを配合して固めた。これまでの無駄を見詰め直し、「巣ごもり時間」を生かして製作したという。初めての試みだったが、訪れた人は思わぬプレゼントに「かわいい」などと喜んだ。
緊急事態宣言下は葬儀の依頼も減り、不要不急な外出の自粛に伴って、寺に足を運ぶ人も減ったのが現状だ。コロナで物理的な距離が広がる中、心のありようなどを密にし続けることが鍵となる。「一つ一つのご縁を大事にしながら工夫や変化をしていく」と吉井住職。負のイメージが付きまといがちなコロナ対策だが、積極的に変わり続けることで可能性が生まれる。
(金子勝俊)