―苫東地域の2025年展望は。
「5月の大型連休前後を中心に、明らかな動きや始まりが見える年になる。ベンチャーウイスキー(のグレーンウイスキー蒸留所)、エクイスグループの苫東バイオマス発電所、半導体関連も竣工(しゅんこう)する。(昨年9月に着工したソフトバンクの)データーセンターは本格的な工事に入り、(同8月に苫東工場を創業した医療や食品などの総合化学業大手)カネカの2期工事も動きだす。メガソーラー(大規模太陽光発電設備)やGX(グリーントランスフォーメーション)系の動きもあり、苫東は非常ににぎわいが出てくる。臨海部もアンモニア拠点の取り組みが少しずつ具体化し、アンモニア混焼や(二酸化炭素を分離、回収、貯留する)CCSなど、脱炭素化の取り組みが加速する」
―カーボンニュートラル(CN、温室効果ガスの排出ゼロ)、GXの動きが盛んだ。
「電気はクリーンなエネルギーをどう調達できるか、という事例をつくっていきたい。(苫東地域内のメガソーラーで)すでに自営線を作って供給するダイナックスの事例がある。(エリア内でエネルギーを自給自足する送配電)マイクログリッドの検討も始まり、PPA(電力販売契約)で太陽光発電を取り入れる動きもある。太陽光とものづくりのマッチングみたいなことを考えていかなくては。具体的に見えるものにする1年にしたい」
「GXは5年ごとに節目が来て、25年は本当に節目。(苫東地域のメガソーラーから三井アウトレットパーク札幌北広島などへの送電を計画する)三井不動産が自分たちの施設に太陽光を入れる取り組みを具体化していく他、車関係の企業も太陽光を取り入れていくと思う。これは苫小牧の強み。臨海部の石炭火力の脱炭素化も、どう動いていくか重要なポイントになる。アンモニアやバイオマス発電など、目に見えて起点を作れると考えている」
―会社としての抱負は。
「昨年は契約案件が多く、『飛躍の年にしたい』と言ったことを、ある程度は達成できた。今年は巳(み)年。ヘビは栄養を蓄えてスケールアップするために脱皮する。苫東もまさにそういう年になる。脱皮して目に見えるものが出てくる。次なるフェーズにステップアップしていく」
「(土地の分譲は)24年度がピーク。これからは造成をどんどんやってかないと、売る土地がなくなる。24年度の分譲は面積的に大きかったが、25年度は件数として伸びる気がする。苫東本社の前にある30ヘクタールは今年末、ある程度整備が完了できる。この他柏原で2カ所くらい造成しないと駄目かもしれない。臨海部は、どんどん北に向けて開発を進め、着工する予定。過剰投資にならないよう適正な規模で、今のうちにやれることはやっておく」
「新たな手法としてデベロッパーとの共同開発を考えている。今冬からつたもり山林の間伐など森林の整備を始めた。苫小牧広域森林組合に委託し、森林の整備計画を作ってもらってきれいにしていく。エゾシカの駆除も気合を入れたい」
―課題は。
「(次世代半導体製造ラピダス関連で)千歳の工事の影響が出てくる。工業用水の工事が始まると、新千歳空港へのアクセス道路が片側通行になる。水そのものは道企業局の頑張りで、ある程度は見込みが立ってきた感じ。今年はできる限り苫東内でいろんなセミナーを開き、苫東の現況をお知らせすることも積極的に取り組みたい。人手不足も課題で、市とも十分連携しながら、人材の確保に気を遣っていく。地域の企業と立地企業を結び付ける機会もつくりたい。高校生を対象に開いている苫東の視察会も密度を濃くできたら」
メモ 苫小牧東部地域(苫東地域)で産業用地を造成、分譲する第三セクター。同地域は本道の物流拠点で、広大な用地もあるため注目を集め、2023年度は売上高37億円余りと過去最高を記録した。