光沢感を放つカササギ ~光の反射が生み出す青緑色~

  • 救護室のカルテ, 特集
  • 2025年1月17日
保護されたカササギ

  今冬が始まる頃、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターに、黒と白のツートンカラーが特徴的な、カササギ(スズメ目カラス科)が搬入されました。

   カササギといえば、苫小牧市にお住まいの方は、もうおなじみの野鳥かもしれませんが、実は、北海道はもとより、もともと日本に生息していなかった野鳥です。

   カササギはヨーロッパ全域やアジア中緯度地域、北アメリカ北部など、北半球を広範囲に生息地としていますが、日本には戦国時代、朝鮮半島から九州北部に持ち込まれ定着したといわれています。佐賀平野を中心とした生息地は1923年に国の天然記念物に、また65年には佐賀県の県鳥にも指定されました。

   日本では九州地方の一部にしか生息していなかったカササギですが、90年代に室蘭市で繁殖が確認された後、胆振管内に生息域を広げ、苫小牧市内でもごく普通に観察されるようになりました。私が当センターに就任した2007年ごろ、来館者の方々に「あの白と黒のカラスのような鳥はなんですか」と、よく質問を受けたものですが、現在では多くの方々が「カササギ」であることを認識されています。

   そんな身近な野鳥となったカササギですが、この日、ある民家近くで飛べずにいたところを保護されました。建物などの人工物に衝突したのか、右眼周囲が腫れていました。幸い、眼球自体に傷等はなく、しばらく安静にすると室内を飛び回れるほどに回復。無事にリリースとなったのですが、その羽の美しさには改めて目を引くものがありました。

   一見、真っ黒に見える羽も、翼と尾羽は青緑色の強い光沢感があります。一般的な鳥類の羽は色素によりさまざまな羽色になりますが、この光沢感のある部分は「構造色」といって、羽の微細なつくりが光を反射することで生み出され、見る角度によっても輝き方が変わる、不思議で魅力的な羽なのです。そんな美しい羽をまとうカササギ。もし街中で見掛けることがありましたら、じっくりとその輝きも観察していただけたらと思います。

  (ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

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