育てる

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  • 2025年1月11日

  浦河町出身の作家、馳星周さんが「少年と犬」で2020年上期の直木賞を受賞した時、記者会見で「犬に限らず小説の中に動物を出すのはずるいですよね」と謙遜気味に語っていたのを思い出す。馳さんは小説を書き始める前から大の愛犬家。飼い始めて30年ほどになり、夏の間、暑さから犬の負担を軽減するため、軽井沢に移住したり、古里の浦河町に期間限定で過ごしたりしているそうだ。

   犬との生活に「こちらの機嫌が悪いとどうしたの」というふうな顔を向けてくる愛らしさ。そんな犬と心を通わせる日常の生活に「これはもう書くよりない。書かせてくれ」と、筆を進めたという。

   人と犬を題材にした小説は数多い。それだけ犬と人の交わりは長く、深いといえる。よくネットに上がる「いぬのきもち」「わんちゃんホンポ」を読み、飼い主と犬との愛情あふれる交流に心を和ませている。大型犬の知能は3歳の子どもと同じぐらいと言われるが、性格は犬種によってさまざま。犬を育てるのと、子どもを育てるのと意外に共通点が多いことに気付く。離れず近づき過ぎず、寛容で丁寧な犬育てが、子育ての参考になる。

   馳さんは「犬は神様が遣わしてくれた贈り物」と記しているが、子どももまったく同じ。大切にしたい贈り物だ。(教)

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