大統領の身柄拘束中止―韓国捜査本部 内乱容疑で一時公邸入り―警護員や兵士の抵抗で「不可能」

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  • 2025年1月4日

  【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」を巡り、内乱と職権乱用の容疑で捜査している合同捜査本部は3日、ソウルの大統領公邸にこもる尹氏の身柄拘束を試みた。捜査員らが拘束令状執行のため公邸敷地内に入ったものの、警護員や兵士が阻止。合同捜査本部は「事実上、令状執行は不可能」と判断し、この日の拘束を断念した。

   高官犯罪捜査庁(高捜庁)関係者によると、午前8時(日本時間同)すぎに同庁検事ら約人、捜査員約人が敷地内に立ち入った。大統領警護庁幹部は「法に基づき(大統領を)警護する」と協力を拒否。捜査員は警護員らと約5時間半にわたりにらみ合った末、午後1時半ごろに引き揚げた。令状の期限は6日で、合同捜査本部は今後の対応を検討する。

  合同捜査本部は敷地内2カ所の警備の「防衛線」を突破し、公邸の建物から約200メートルまで接近した。捜査員と警護員らの小競り合いもあったという。ただ、その先にバスや車約台でバリケードが築かれ、警護員と兵士の計200人超が行く手をふさいだ。高捜庁は「現場の人員の安全に懸念があった」と指摘した。

  尹氏の弁護団は声明で「不法かつ無効な令状執行だ」と主張した。与党「国民の力」トップの権寧世非常対策委員長も記者会見を開き「不公正な越権行為だ」と批判した。聯合ニュースによれば、合同捜査本部は令状執行を阻んだ朴鍾俊警護庁長官と同庁次長を特殊公務執行妨害容疑で捜査する方針を決め、4日に出頭するよう要請した。

  尹氏に対しては、高捜庁や警察などで構成する合同捜査本部が3回にわたり出頭を求めたが、尹氏側は高捜庁に内乱罪の捜査権限がないとして拒否。合同捜査本部は昨年12月30日、拘束令状を請求し、ソウル西部地裁が同日に発付した。大統領公邸の捜索令状も出した。現職大統領の拘束令状発付は韓国史上初めて。

  高捜庁は令状で尹氏を内乱の首謀者と位置付けた。大統領には在職中に訴追されない「不訴追特権」があるが、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こす内乱罪は例外となっている。

  捜査当局は、非常戒厳後に国会に軍や警察が投入されたことなどについて、内乱罪の「暴動」に該当すると判断。尹氏に非常戒厳を進言したとされる金龍顕前国防相は既に逮捕、起訴されている。

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