秋晴れの9月下旬、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターで「野生動物に学ぶ救護セミナー」を開催しました。これは、2012年から開催しているセミナーで、当初は救護に関連する内容を主としていましたが、近年では自然界のさまざまな生き物もテーマに、各分野で活躍している講師を招いて実施しています。
この日のテーマは「貝」。地域環境計画の山上竜生さんを講師にお迎えしました。
「貝」とは、軟体動物に分類されている生き物で、古生代(5億年前)から存在しており、国内では分かっているだけでも5000種以上の種類が生息しているそうです。その中で、最も身近で代表的な貝の仲間といえば、カタツムリ。小さな子どもから大人まで認知度が高いカタツムリですが、そもそもカタツムリが貝の仲間であるということはあまり知られていません。また「カタツムリ」という名前についても、そういった名の種が存在しているわけではなく、「陸に棲(す)む巻き貝のうち、殻を持つものの総称」であるということも意外に知られていません。
誰もが知るカタツムリなだけに、初めて聞く名前や生態などに驚く参加者の皆さんと、レクチャー後は山上さんの案内のもと、実際に当センターの周辺でカタツムリの観察を行いました。落ち葉や倒木の下ではパツラマイマイやコハクガイ、葉の上にはエゾマイマイやオカモノアラガイなど。その発見した場所の違いから、それぞれの種が何を食べているのか想像を広げられたり、また姿が見えなくても、食痕でそこに存在していたことが判明したりすることも教えていただき、これまで一緒くたに見ていた「カタツムリ」の奥深さを感じました。
また、カタツムリは総じて移動能力が低く、環境変化への耐性が種ごとに大きく異なるため、そこにいる種を調べると、その場所の自然度や過去に起きた改変等を推測できることも。まさに生態系のバロメーターと言える生き物なのです。
ぜひ皆さまも、新たな視点でカタツムリを観察してもらえたら、と思います。
来年度もさまざまなテーマでセミナーを企画しております。新しい発見や学びを、皆さまと共有させていただけたら幸いです。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)