◇11 異例の選挙戦 肌で感じた生きざま

  • 特集, 記者ノートから2024
  • 2024年12月28日

  衆議院の解散により急転直下で行われた10月下旬の総選挙、自身の体調不良を理由に退任した岩倉博文前苫小牧市長の後任を決める今月上旬の市長選―。苫小牧では、寒さが厳しくなり始めた秋から師走にかけて当初予定していなかった異例の選挙が相次いだ。

   それぞれの選挙戦で候補者を担当する機会に恵まれ、インタビューで政策はもちろん、その人物の生い立ちや背景、人となりを取材させてもらった。ある人は家族を引き連れてこのまちに移り住み、またある人は自ら安定した職を離れ、リスクを背負って出馬表明に至った。それぞれ立場は違えど、今後の人生を懸けた勇気ある決断だったのではないか。批判はできても「じゃああなたにできるのか?」と問われ、簡単にできることではない。その人間の生きざまを肌で感じることができた。

   私自身、政治家と面識はあれど、どこかかけ離れた存在という感覚を持っていたが地元の議員との対話を通じて、意外と身近にいると感じるきっかけになった。投票で民意を託された人物だから有権者の期待に応える責任があるし、努力するのは当然だが、「―ハラスメント」とか「誹謗(ひぼう)中傷」といったものをもろに受けながらまちのために働く人たちの思いに触れた1年だった。

   昨年から直近の衆院選まで尾を引いた自民党の裏金事件を受けた与党議員の辞職、そして苫小牧の新たなリーダー誕生。JR苫小牧駅前で10年以上にわたって廃虚化しているエガオビル周辺の再開発にも、一定の見通しが立った。長く続いた一つの時代に幕が下り、苫小牧は今、転換期を迎えようとしている。

   この先、自分が生まれ育ったこのまちでどんな物語が描かれるのか、一市民として注目していきたい。

 (石川鉄也)

 ※終わり

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