アイヌ民族文化財団(札幌市、常本照樹理事長)は、北欧フィンランドの先住民族サーミについて展示するフィンランド国立サーミ博物館SIIDA(シイーダ)と連携協定を再締結した。同財団が白老町で運営する民族共生象徴空間(ウポポイ)と同博物館が共に国立施設になったことが背景にあり、40年ぶりに調印をし直した。調印式は同博物館のある都市イナリで11月7日に行われ、同財団は「新たな出発を契機に新たな協力体制を築いていきたい」としている。
同財団とシイーダとの交流は、ウポポイの前身で民間の旧アイヌ民族博物館が開館した84年、フィンランドからサーミの代表団3人を招待したことから生まれた。同年6月に山丸武雄館長(当時)がイナリの民間施設「サーミ博物館」を来訪し、姉妹提携宣言に署名した。
両博物館とも60年代に地域の小さな野外施設として開館。その後約半世紀を経て、旧アイヌ民族博物館はアイヌをテーマとしたナショナルセンター・ウポポイとして20年に開業した。サーミ博物館は国が保管していたサーミの資料が加わり、22年にリニューアルオープン。双方が国立施設となったことを機に、調印を再締結することにした。
連携協定の内容は1984年に署名した姉妹提携宣言が基になっている。先住民族の文化の振興、普及を目的とし、内容は(1)職員の相互交流に関すること(2)先住民族の文化等に関する共同調査研究およびその成果展示などに関すること(3)刊行物および展示図録などの出版物の交換に関すること(4)相互の施設のプロモーションに関すること(5)その他、両者が必要と認めること―の5項目。
調印では常本理事長とタイナ・マレット・ピエスキ館長が署名。財団の阿部範幸事務局長代理と民族共生象徴空間(ウポポイ)の野本正博副本部長が立ち会った。
両博物館の交流は長年続いており、88年には旧アイヌ民族博物館の職員が北欧で講演し、89年には白老で開かれた北方民族国際フェスティバルにサーミのミュージシャンを招待。98年にサーミ博物館がシイーダとして開館した際は、白老から式典に参加してアイヌ民族の古式舞踊を披露した。2004年にはシイーダがアイヌ文化に関する展示を行っている。同財団は今後について「世界各国の先住民文化機関と共に国際的なパートナーシップを形成しながら両先住民族の文化振興と普及を進める」としている。