遠い昔。駆け出し記者時代。恵庭市の漁川のほとりに、記念碑が建立されることになった。当時千歳勤務で管轄外だったが、恵庭支局長の配慮で取材させてもらうことになった。多分、そのアーテイストをこよなく愛していることを、支局長が知っていたからかもしれない。
世界的なロックバンド、ビートルズの一人。ジョン・レノンの記念碑で、苫小牧にゆかりのある洋画家が建立した。事前取材で洋画家は「当日はヨーコも来るって。電話が来たよ」とぽつり。まずはあのオノ・ヨーコさんと、電話で会話できるほど親交があることに驚いた。除幕式には本当にヨーコさんがやって来た。
今はもうあの場所に記念碑はないが、当時ジョンの肖像画と代表曲「イマジン」の歌詞が刻まれていた。除幕式を終えて車に乗り込もうとするヨーコさんに、「『イマジン』でジョンが一番訴えたかったことは何でしょう」と聞いた。ヨーコさんは一言、こう語った。「愛です」―。今でもあの言葉は忘れられない。
世界で歌い継がれるあの名曲でジョンは「想像してごらん 国境なんてないんだと 殺したり死んだりする理由もなく…」とメッセージを送った。海の向こうでは現在も戦火がやまない。ファンの凶弾に倒れ、44年目の師走が行く。(広)