今回は胸部X線検査についてお話しします。X線検査ではX線という放射線を用いて身体の内部の様子を画像化し、その写真を観察して病気などを見つけることができます。身体を構成する骨や脂肪、水分などは組織によってX線の通り抜けやすさに差があり、通過したX線の量の違いを白黒の濃淡のある写真として写し出します。この写真では空気などのX線が通過しやすい部分が黒く、骨などのX線が通過しにくい部分が白く表れます。
胸部X線検査では、背部から胸部にX線を照射し、肺や心臓、両肺の間にある縦隔などの器官の異常を調べます。一方向からX線を照射するため、ボタンや髪の毛などが身体と重なってしまうと、写真に写り込んで死角となってしまい、異常を見つけることが困難となってしまうことがあります。そのため、検査着への着替えや、髪の毛を結んでいただくようお願いすることがあります。
この検査では、撮影の時に大きく息を吸い込むことでたくさんの空気が入って肺が広がり、肺の構造が写りやすくなります。また、胸部をはっきりと写すために息止めが必要です。息を止めることで肺の動きが止まり、写真がぼけにくくなります。検査を受ける際には呼吸の合図に合わせて大きく息を吸って、止めていただくようお願いいたします。
放射線を使用するため被ばくというリスクが生じますが、この検査で受ける被ばく線量は約0・05ミリシーベルト以下です。日常生活をする中で宇宙や大地から浴びる自然放射線による被ばく線量は、年間2・4ミリシーベルトといわれており、それと比較してもとても少なく、健康に影響を及ぼすことはほとんどない線量となっております。ただし、胎児が放射線の影響を受ける恐れがあるため、妊娠中、あるいは妊娠の可能性がある方は必ず検査の前に伝えて、相談することが大切です。
胸部X線検査で疑われることのある主な疾病は、肺結核・肺炎・COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの肺の炎症や、肺がんなどの呼吸器の病気、大動脈の異常や心肥大などの循環器の病気です。検査時間が短く、手軽に受けられる胸部X線検査は自覚症状のない病気を早期に発見するのに有用な検査であり、国の指針に基づいて実施される肺がん検診でも胸部X線検査が推奨されています。
健康診断やがん検診などで胸部X線検査の結果が「要精密検査」となった場合は、診断を確定させるため必ず精密検査を受診していただきますようお願いいたします。