尹大統領の出国禁止 内乱容疑で史上初の捜査―韓国―戒厳令巡り

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  • 2024年12月10日

  【ソウル時事】韓国法務省は9日、尹錫悦大統領に対する出国禁止措置を決めた。政府高官らの不正を捜査する機関「高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)」が措置を同省に申請した。公捜庁などは非常戒厳を3日に宣言した尹氏について内乱容疑などで捜査している。

  現職大統領の内乱容疑捜査は史上初めて。憲法は、大統領が在職中に訴追されない「不訴追特権」を定めるが、例外として「内乱または外患の罪を犯した場合」を明記している。捜査機関が今後、尹氏の逮捕に踏み切るかが焦点になる。

  警察は8日、尹氏の側近だった金龍顕前国防相の関係先の国防相執務室や官舎、自宅を家宅捜索した。金氏は同日、検察に出頭し緊急逮捕された。聯合ニュースによると、検察は9日、金氏が「尹氏と共謀した疑いがある」として逮捕状を請求した。

  警察の特別捜査団長は9日、記者会見を開き、「聖域なく法と原則に従い徹底的に捜査する」と表明。尹氏や金氏、李祥敏前行政安全相、戒厳司令官を担った朴安洙陸軍参謀総長ら11人の刑事告発を受理し、150人体制で捜査する。

  3機関が捜査の速度を競い、主導権争いの様相を呈す。ただ、確保すべき証拠が各機関に分散する懸念も指摘されている。公捜庁は警察と検察に捜査を移管するよう要請したが、両機関は応じていない。

   検察は尹氏の古巣で、政権や与党の要人にも検察出身者が多い。革新系最大野党「共に民主党」は尹氏の逮捕を要求しつつ、「尹氏と利害を共有する検察は事件を隠蔽(いんぺい)する恐れがある」と主張。同党は9日、政権から独立して捜査する特別検察官の設置法案を国会に提出した。

  刑法は、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした場合に内乱罪を適用し、死刑または無期懲役などを科すと定める。全斗煥、盧泰愚両元大統領は1980年の戒厳令下で軍がデモを鎮圧した「光州事件」などに関して退任後の97年に最高裁で無期懲役などの刑が確定し、その後特赦された。

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