遠洋マグロなどの漁業者で組織する日本かつお・まぐろ漁業協同組合(東京)は、若手漁師を確保するため、各地で行っている水産高校での説明会や漁師募集のイベントで、仮想現実(VR)対応のゴーグル端末を使用し、志願者を増やしている。
写真や通常の映像で見るのとは異なり、ゴーグルをのぞくと船上から360度見渡すことが可能で、マグロを取る様子や、船員らの作業を臨場感ある映像で体験できる。
同組合によると、「これまで水産高校に説明に行っても、マグロ漁師へ興味を持つ生徒はわずかだったが、VRを使ってからは志願者が多数出るようになった」という。
VRを体験した生徒からは、「(遠洋漁業には)危険なイメージしかなかったが、安全を確保しながら船員が協力して操業していることが分かった」といった感想が寄せられている。
マグロ漁業に限らず、漁師になっても数年でやめてしまう例が多く、定着が課題となっている。遠洋漁業は半年以上の長い航海が多いため、「若者には船上でも陸と同じようにSNSが使える環境が重要」(同組合)とみている。
現状ではLINEなどをしていても、海域によってはつながりにくいことが多いが、衛星通信サービス「スターリンク」を導入すれば、「快適なネット環境が維持できる」(マグロ漁業者)という。
同組合は「設置コストや通信料、通信状況などを勘案して、個々の漁業者が利便性を認めてスターリンクを搭載するケースが増えつつある」と話しており、各漁船の導入に期待を込める。
メバチマグロをはじめ、日本の刺し身用マグロ類の7割以上を供給する遠洋マグロはえ縄漁業。同組合によると、はえ縄漁船の日本人船員数は、今年およそ820人で、20年前の5分の1に激減しており、担い手確保が急務となっている。