11月下旬、胆振の少し西側で森や川を友人と歩いた。普段から野生生物を一緒に観察する仲。友人が「林道にヒグマの痕跡があったが、野鳥の気配もありそう」と話すのにひかれ、案内してもらった。
遠くでカラたちが飛び交う姿が見えるほどに、林道を包み込む木々の葉は落ち、どこか寂しいが、「ヒグマ」という言葉一つでどこか警戒心も強い。カラ類はもちろんだが、エゾライチョウなどの姿も観察できそうな雰囲気がある。そしてフクロウのすみかとなる樹洞のようなものもあり、本格化する冬が待ち遠しくなる。
そんな林道では幾つもの沢や小川を越えるのだが、少し川幅のある場所に着くと「ここです」と友人が言う。橋のたもとにヒグマのふん。痕跡を見つけた1週間前にはなかったというキタキツネのふんも、マーキングのごとくすぐそばに残されていた。
この日も半日近く氷点下ということもあってか、木の枝は歯が立たないほどに凍っていた。しかし、そのふんにエゾシカの毛が含まれていることに気付き、肉食個体がいること、少しの違和感でも共有して進んでいくことを確認し、森の深部へ。
あるところまで進むと次は川沿いを行く。川をせわしなく飛ぶのはカワガラスだ。観察機会が多く、水生昆虫などが豊富な川なのだろうと推測させる。歩みを進めるとまたヒグマのふんがあった。そのふんはまだ凍る気配もなく、またエゾシカの毛を含み猛烈な臭いを放っていた。「今朝のもの」という結論を立て、ここで、この森の散策を終えた。
この季節だと「ヤマセミにも会えるかも」と思い、数キロ離れた2カ所の川へ、5年ぶりに足を運ぶ。1カ所目ではヤマセミの気配もない。続けざまにもう一方に向かうと、小雪が舞うようになり寒さも厳しい。友人に面白い場所を案内してもらった手前、自分もどうかワクワクを感じてもらいたいと思って気配を探る。
「いたわ。5年ぶり」。白と黒の美しいヤマセミの姿があったのです。世代は変わっているかもしれないが、変わらぬ姿と環境があってホッとした。
(日本野鳥の会苫小牧支部・小林誠副支部長)