「彼は無能だ」との批判にフルシチョフ首相が「国家の最高機密を暴露した」と怒った―というのは確か半世紀以上前のソ連(現ロシア)の風刺小話。
トランプ大統領のアメリカで、この小話が現実になった。元側近のボルトン氏が出版した暴露本の内容が日本でも連日、報道されている。先日のテレビで、アメリカの著名記者のインタビューが紹介されていた。「トランプ氏は、フィンランドがロシアの一部だと思っている」「南北朝鮮の分裂の歴史を何度説明しても、理解できない」などの答えは強烈だ。日々報道されるトランプ氏の言動と照らし合わせて「きっとそうなのだろう」と思わせる説得力がある。
さて日本。ボルトン氏が、トランプ氏のゴルフ友達と認めた安倍首相は通常国会が閉会した翌日、記者会見を行った。冒頭に前法務大臣と参院議員の妻が、昨年の参院選に絡んだ買収容疑で逮捕されたことに触れ「法相に任命した者として責任を痛感している。国民に深くおわび申し上げる」と頭を下げた。そして顔を上げた瞬間に主語が変わり「われわれ政治家は改めて自ら襟を正さなければならない」と話して「自分の責任」は一瞬で消えた。手品のようだった。こんな体質への批判か、世論調査の支持率はさらに下がっているようだ。きのうの本紙によると自民党内には「解散はできない」との見方も広がっているとか。
政治家って何だ。考える。(水)