朝一番の仕事は、居間の南向きの窓のカーテンを開けて天候を確かめること。足腰の不具合で山歩きができなくなっても、習慣はなかなか変わらない。
次に西側のカーテンを開けると白い文字の書かれた小さな石が見える。石の周りにはパンジーが咲き、斜め後ろのマーガレットの花も満開になった。石は飼い犬の死後に置いた。命日は1999年4月26日。もう、21年が過ぎた。
改正動物愛護法が今月1日、施行された。ペットの飼育は増えるが、捨てたり虐待したりする飼い主は減らない。ブームに乗って、劣悪な環境で繁殖をする悪質な業者もいる。改正法では従来、ペットを捨てた飼い主に科されていた罰金刑に、懲役刑が加えられた。殺したり、傷つけたりした動物殺傷罪の罰則はこれまで「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」だったが、改正後は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に引き上げられた。罰則強化でペットの虐待を防ぐ狙い。
今でも朝に玄関のドアを開けると「早く!」と呼ぶ声が耳の奥から聞こえる。囲いの戸を蹴破るように飛び出して体当たりを繰り返し、顔をなめてやろうと隙をうかがう息遣いも思い出す。「代わりを飼えば―」と助言してくれた人もいたが結局、飼わなかった。獣医さんを威嚇しない行儀のしつけをできず、仕事にかこつけて病院にも連れて行かなかった自分の罰はおそらく終身刑なのだ。(水)