赤羽一嘉国土交通相が19日、アイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)を7月12日に開業すると発表したことを受け、2度にわたる延期で先行き不安を強めていた地元白老町では、ようやくオープン日が見えたことに安堵(あんど)する声が広がった。新型コロナウイルスの影響で当初の4月24日開業から大きくずれ込んだものの、ウポポイを核とした地域活性化やアイヌ文化振興への期待感が改めて高まっている。
開業は感染拡大の影響で4月24日から5月29日へ先送りされ、さらに政府の緊急事態宣言で当面延期となっていた。オープンの日取りが決まらず、先が見えない状況に町や経済界、住民もやきもきしていた中で、開業日の決定に戸田安彦町長は「大変に喜ばしい。町としても白老に訪れた人たちに満足していただけるよう受け入れ体制を整えたい」とした。
ウポポイの集客力を生かした経済振興に期待を寄せながら、2度の開業延期に気落ちしていた事業所や経済団体も「3度目の正直になってほしい」と願う。町商工会の熊谷威二会長は「ビジネスチャンスと捉えて創業したり、先行投資したりした事業者はいつオープンするのかと不安に駆られていた。また頑張るという気持ちになってほしい」と話した。白老観光協会の福田茂穂会長も「しっかりとしたコロナ対策でウポポイの安全安心を周知してもらい、観光客の入り込みが回復していけば」と期待した。
住民からも「今度こそ開業を」との声が上がる。町内会連合会の吉村智会長は「地元に素晴らしい施設が完成したのに、扉が閉じたままの状態を心配していた。感染防止策を十分に講じて、白老発展とアイヌ文化の振興につなげてほしい」と述べた。
「ウポポイはアイヌ民族の未来にとって重要な施設」と強調する白老アイヌ協会の山丸和幸理事長も7月のオープンに期待。「若い職員はアイヌ文化の復興と伝承に頑張ってほしいし、国もその活動を支えてほしい」と話した。
政府の発表を受けて白老町は、開業日までの日数を示すカウントダウンパネルの電光表示を役場1階ロビーで再開させるほか、町ホームページなどで周知を図る。延期していた観光客向け町内循環バスの運行をウポポイ開業日に合わせてスタートさせ、JR白老駅併設の自由通路に設けた臨時改札口の運用を開始する予定。また、ウポポイを生かしたにぎわい創出に向けて、駅北観光商業ゾーン(ポロトミンタラ)でのロングランイベントも秋にかけて展開する考えだ。