2 眼鏡接客販売 距離は保ち心を寄せる マスク着用での試着にも対応

  • コロナ禍の中で 密と向き合う, 特集
  • 2020年6月19日
眼鏡を数本ずつトレーに出して提案する店主の日高さん

  「いらっしゃいませ」

   自動ドアのように店舗の入り口が開いた。苫小牧市住吉町の眼鏡店「オプティークヒダカ」。事前予約のあった常連客が店舗前の駐車場に車を止めたのを確認すると、店主の日高浩一さん(56)または妻の一枝さん(54)が明るく出迎える。

   ドアノブなどに不特定多数が触れる機会を減らすため、来客に気付いたらドアの開閉は自分たちで行っている。新型コロナウイルスの感染拡大防止策だ。

   眼鏡は売り場にほとんど並んでいない。フレームは国内外のブランド品500本以上をそろえているが、ほとんどが引き出しに入ったままだ。入店客は多くて1度に2組までに限定。客との距離を保ちながら会話などを通してニーズを見極め、眼鏡を数本ずつトレーに出して提案する。客が眼鏡を試着するたびに、アルコールを含ませた布巾で丁寧に拭く。

   眼鏡の試着や視力の測定など客との「密接」が避けられない眼鏡店だが、安心・安全で快適に利用してもらおうと、道が提唱する「新北海道スタイル」に沿ったコロナ対策を徹底している。視力測定器に透明なプラスチック板で間仕切りを設けるなど、浩一さんは「やれることは精いっぱいやっている」と自負。一見客が戸惑ってすぐ店を後にしたこともあったが、訪れた人に満足を提供するための姿勢に妥協はない。

   利用客は時節柄、マスクを着用しているが、試着などの際に「外して」とは求めない。「眼鏡は目や眉、顔の輪郭で合わせる。マスクをしているからこそ眼鏡で顔の印象が変わる。『眼鏡は楽しい』と思ってもらうことに変わりはない」と強調する。もちろんマスクを外して試着もでき、「お客さんの希望に沿った対応を心掛けている」と話す。

   ソーシャルディスタンス(社会的距離)に加え、接客で配慮しているのは心の距離。従来は「テンションを上げて楽しもう」という雰囲気を前面に出していたが、コロナの影響で「一歩引かれる方も多くなった」と分析。接触する機会が減った分、相手の心に寄り添った接客を心掛ける。

 (金子勝俊)

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