指先の爪を手入れし、装飾するネイルサロン。施術者と利用客の距離は「密」になりがちで、新型コロナウイルスの感染予防策を模索する日々が続く。苫小牧市緑町の「Nail House Q’(ネイルハウスキューズ)」もそんな店舗の一つ。「密」の回避へ予約数を絞り込んでおり、売り上げに大きな影響が出ているがこれまで通り客一人ひとりと丁寧に向き合っている。
白色を基調とした清潔感あふれる室内で唐神智美代表(35)は、常にマスク姿で従業員や客と応対する。施術席は店内に二つあるが、現在は予約を制限し、1人ずつ接客。施術時間の短縮に努め、来店者同士が接触しないよう心掛ける。売り上げが犠牲になっても、すべての客が快適に過ごせる空間の維持を最優先する。
「密」対策として、ゴム手袋やフェースガードを装着して施術を試みたこともあった。しかし、手先の感覚が鈍ったり、光の反射で細部が見えにくかったりしたため、「実用的ではない」と使用を諦めた。
施術台への間仕切り設置も「本来、サロンはリラックスする時間を提供する空間なのに、圧迫感を与えてしまう」と見合わせた経緯がある。
大切にしているのは「お客さまが安心して利用できる環境」。手指消毒はもともと必須だが、一層、小まめに。客にも協力を求める。施術時は、真正面を避けて自ら左右にずれる配慮もしている。積極的に集客できない日々が続くが、唐神代表は「大前提としてお客さまとの信頼関係がある」と強調する。
コロナの影響で月の売り上げが半分ほどに落ち込み、ブライダル関連の予約に関してはほぼ100%キャンセルに。そんな厳しい状況下でも3月以降、新規の予約受け付けを自粛するサロンに、オープン当初から利用する常連の女性(66)は「コロナ前から店内が清潔だったので安心」と強い信頼を寄せる。コロナの収束がなかなか見通せない中、唐神代表は「来店する人がリラックスし、めいる気分を少しでも元気にできるよう努めたい」と前を向く。
(松原俊介)
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新型コロナウイルスの感染リスクを低減させる新しい生活様式「新北海道スタイル」が提唱され、これまで密接や密集などが避けられなかった職業も対策などに余念がない。「密」と向き合う現場を訪ねる。