漢字

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  • 2020年6月10日

  先日朝、テレビに気象庁という文字が映って、ふと象の文字が気になった。ゾウ(象)と同じでよかっただろうか? 自分の漢字力への不安が膨らむ。

   漢字が苦手だ。調べる熱意や練習する根気がないのだ。小学生の頃、雑誌で見つけた烏(カラス)という字は、鳥の印刷間違いに違いないと長く決め付けていた。

   漢字や熟語の読み書きや意味を不正確に覚えていて、恥ずかしい思いをすることがある。テレビやラジオの言葉遣いや文字表記には厳しいのに、身近に間違える人がいても、それが年長者だったりすると指摘しにくい。困った優しさだろう。立川談四楼著「声に出して笑える日本語」に談志師匠の失敗談が紹介されていた。ある日、師匠が「頭角」と書いた紙を渡しどう読むか聞く。「と、とうかくだと思いますが?」と答えると、師匠は頭を抱え込んで、「おれはてっきりズカクだと思い、方々でしゃべりまくってしまった」。

   読みは覚えていて、漢字が怪しい場合は、今ならパソコンや携帯電話が瞬時に助けてくれる。機械に頼り切り、背伸びをして難しい漢字を使う人もいるようだ。辞書を広げ、書いて確認をするのが原則だろう。自戒を込めての話。

   気象の象について、近くのうるさ型に聞いてみた。「現象の象、鼻の長い象と同じ!」。悔しかったから、ついでに一朝一夕の読みも聞いてみた。「あら? いっちょういちゆう?」。ほほう。(水)

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