白老町のアイヌ文化復興拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)で9日に始まった地元町民向け内覧会では、中核施設・国立アイヌ民族博物館の展示物が初公開された。基本展示室にはアイヌ民族の生活道具や文献など約700点の資料を展示し、自然との共生で育んだ文化を今に伝えている。
同博物館はアイヌ民族を主題とした国内初の国立博物館で、建物は鉄筋コンクリート造り3階建て、延べ床面積8600平方メートル。内部にはアイヌ民族資料の基本展示室や特別展示室、映像で伝統文化を紹介するシアター室、ライブラリーなどを備えている。所蔵資料は、ポロト湖畔にあった旧アイヌ民族博物館からの引き継ぎや文化庁の買い取りを合わせて約1万点。このうち約700点を基本展示室に並べた。
基本展示室では「歴史」「交流」「世界」「言葉」「暮らし」など6テーマに沿って資料を展示。解説文はアイヌ語も用い、アイヌ民族が「私たち」という視点で自らの文化や歴史を説明する形を採用している。
展示スペースには、衣食住に関わる生活道具や儀式の道具などさまざまな資料が並ぶ。樺太アイヌがクマの霊送り儀礼の際、クマをつなぐために使った高さ5メートルの棒状の祭具が目玉の一つ。北海道大学アイヌ・先住民研究センターの北原次郎太准教授らが再現、製作した。釧路管内厚岸町の厚岸湾から出土し、18世紀前後に使われたアイヌ民族の外洋船「イタオマチプ」も目を引く。
また、「アイヌ神謡集」の著者として知られる登別出身の知里幸恵(1903~22年)のノート(道指定有形文化財)、アイヌ民族が交易品としたラッコやクロテンの毛皮なども紹介。親から子へと伝えられた口承文芸を聞くことができる装置もある。
内覧会ではウポポイ開業に先立ち、特別展示室で開催予定の開館記念特別展「私たちが受け継ぐ文化―アイヌ文化を未来へつなぐ」も公開。平取町二風谷のアイヌ文化研究者萱野茂氏(1926~2006年)が編さんした「アイヌ語辞典」など書籍類や、各地の工芸師が製作した民具など、文化継承をテーマにした資料の数々を展示。内覧会参加者の関心を引いた。
博物館は開館後、多様なテーマで特別展や企画展を展開し、国内外にアイヌ文化を発信していく。