下の道

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年6月6日

  街はみんな寂れて、立派なのは道の駅だけ―。ふと思い立って札幌から函館の手前まで高速道路を使わずに往復した知人の、国道沿いの風景への感想。

   思い当たる。高速道路が珍しかった時代から車に乗っている。延びる快適な道路が楽しく、遠距離移動にはいつも利用していた。しかし気が付くと、いつの頃からか国道や道道を走ることが多くなった。何年ぶりかのそば屋さんやドライブインに寄り、休み休み移動する楽しさがある。そして沿道の色あせて古くなっていく建物や風景を確かめる。新しい物といえばコンビニか町外れの道の駅、パチンコ店―。ほぼ10年ぶりに訪問した知人には、「下の道」の沿道の寂れ具合が衝撃だったようだ。

   見た目の寂れだけでなく、若者が減り、子どもも少なくなった市や町村の内実は、もっともっと厳しい。目を離してはならない。2015年1月に、高波で不通になったJR日高線の鵡川―様似間116キロは、バス転換に向けた協議が4日、7カ月ぶりに行われ、JR北海道が支援の金額を沿線自治体に示した。結論は近いのか。

   道教委はこのほど2021~23年度の公立高配置計画案を発表。北見市の留辺蘂高校の募集停止が打ち出された。留辺蘂は道内各地にある地名。三省堂「萱野茂のアイヌ語辞典」によると「ル=道、ベシ=たどる、ベツ=川」の意味だ。歩く人、通う人の減った道や学びやが、また一つ消える。(水)

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