道が新型コロナウイルス感染拡大防止のため、出光興産北海道製油所(苫小牧市真砂町)の大規模な定期補修工事(シャットダウンメンテナンス=SDM)に携わる作業員を千歳市内に宿泊させないよう求め、少なくとも1万2000泊分が先月、キャンセルされていたことが分かった。地域経済に深刻な打撃をもたらすとし、千歳市は道に撤回を要請。鈴木直道知事は5日の定例会見で「新規患者数が減少し、緊急事態宣言も解除された。引き続き感染防止対策はやってもらうが宿泊先をどのようにしていくかは(出光側に)検討いただいている」と述べ、都道府県をまたぐ移動の自粛要請を緩和する見通しの19日以降、市内での宿泊を容認する姿勢を示した。
SDMは、今月15日から9月中旬にかけて行われる法定の保安検査。4年に1度、プラントを止めて点検や検査、補修工事などを進めている。関係者によると、新型コロナ感染防止策の一環で道が出光側に工事関係者の宿泊先を石狩管内を避け、胆振管内に限るよう要請した。
5月下旬、宿泊業者から「6月上旬の宿泊予約を大量キャンセルされた」と相談を受けた千歳市は「道の要請に基づく動き」との情報をキャッチ。6施設で、延べ約1万2300泊の影響を確認した。中には1施設で3000泊のキャンセルもあったという。山口幸太郎市長は「市内経済に深刻な影響を及ぼす」と、鈴木知事に要請の撤回を求めた。
会見で鈴木知事は、出光側から工事の話を聞いたのが「4月30日ぐらいだったと思う」とし、当時は政府が緊急事態宣言を出し、道内の新規感染者も急増するなど「『県をまたいでの往来を控えてください』と求めている状況だった」と指摘。特に札幌市を中心に石狩管内で「非常に患者数が多い中、道外から何千人も来られると感染リスクが高くなってしまうという状況下、宿泊の対応についてお願いした」と経緯を語った。
道は18日まで「他都府県との不要不急の往来」について「慎重な対応」を求めているが、「今のままの流れで行くと、19日から次のステージに行けるかもしれない。そういう状況を(出光側に)伝えさせてもらっている」とした。
長年、SDM関連の宿泊客を受け入れてきた千歳市内のホテルの支配人は「旅行会社を通じ6、7の両月で1700泊の予約を受けていたが、5月下旬にキャンセルの連絡を受けた」と説明。「これまでスポーツ大会や道外のゴルフ常連客を迎える繁忙期に、やり繰りして部屋を提供してきたのに緊急事態宣言解除後の直前の全面キャンセルはあまりに理不尽」と憤った。
山口市長は5日、「突然のキャンセルで宿泊業者の打撃は大きい。市内での宿泊を改めて検討いただくなどしっかり対応していく」と談話を発表した。
出光興産北海道製油所の広報担当者は「当時の感染拡大状況を鑑みるとやむを得ない対応だったが、千歳の宿泊施設の期待に沿えず残念。今後は千歳の施設も利用させてもらいたい」と話した。