布マスク

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  • 2020年6月4日

  「ようやく」と言おうか、「いまさら」と言おうか。政府が全世帯に配っている布マスクが家に届いた。苫小牧市内は1日に配布が始まったばかり。配達先9万カ所に対し、苫小牧郵便局に届いたマスクは同日現在、約6万セットにとどまっていたので、もう少し先になると思っていた。

   ちょっと迷った揚げ句、使ってみることにした。マスク不足が深刻だった頃に届いていれば、きっと寄贈したと思う。マスクの購入に不自由しなくなった今、寄贈と言えば聞こえはいいが、まるで厄介払いに思われる気もする。通称「アベノマスク」。特に政権を批判する気がなくても、あだ名としては秀逸で、いろんな思いが透ける。

   袋から取り出したマスクは清潔そう。もちろん汚れや髪の毛の混入はなし。口に当たる部分は5層の分厚い作り。縦9・5センチ、横13センチと小さめだが、装着すると思ったよりも違和感はない。同封チラシに「洗濯により縮みます」とあったので、試しに洗ってみたが、1回では縮まなかった。

   やるではないか、アベノマスク。そう思ったのもつかの間で、会話をすると、上へ、下へと、すぐにずれる。よほどの小顔自慢でなければ、合わないのではないか。密着感も強く、これからの季節は、暑苦しそう。ひもに付いた結び目が、そこはかとない安物感を漂わせるのも、気に入らない。マスクに罪はないのだけれど。(金)

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