テレビニュースに、黒人が警察官に首を膝でつぶされ、殺される映像が映された。関心があって見ていたニュースなのだが、まさか殺人の場面まで―。
何も食事中の茶の間に―などと言うのではない。10秒ほどの映像の中の、アメリカという国の差別と暴力の現実に驚かされた。同じ映像は昨夜も放送されていた。
文春新書「人名の世界地図」に差別の根の深さや知恵の残酷さが紹介されている。ドイツに昔、姓を持つことを禁じられた被差別民族に姓を売る、もの分かりの良い領主がいた時代があったそうだ。ただし、長い時を経ても、その人が被差別民族であることが分かるように、売る姓は植物や金属の名前に限ったりしたそうだ。幾つかの姓と意味が例示されていた。
見た映像は、ミネソタ州で5月25日、黒人男性が白人警察官に殺された際に写されたものだ。今、全米140都市に抗議のデモが広がり、一部は暴徒化して破壊や略奪を行っている。トランプ大統領はテロと断定し、各州の知事に軍隊の出動要請を求めている。ある州の知事は「この政権は憎しみと分断の種をまこうとしている」と大統領を批判しているそうだ。
平和なデモへの転換を泣いて呼び掛ける、殺された被害者の弟。警官に向かって「恥を知れ」と繰り返し叫ぶ白人女性。今朝もテレビニュースを見ながら、自分の住む国の差別の歴史や現在、政治や政治家のありようを考えた。(水)