コロナ時代

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年6月2日

  災害は社会の素顔をあらわにする。新型コロナウイルスが自然災害か人的要因があるかは別にしても、医療技術や情報伝達の速さが19世紀のペストの頃より格段に進んだ現代でもほとんど無防備なことを認識した。

   2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)、12年に中東呼吸器症候群(MERS)の流行はあったが、自分の身に迫る危機感はなかった。新型コロナも当初、楽観する見方があった。初動の検証はいずれ必要だが、ワクチンが世界に行き渡るまでは、以前の社会の形に戻ることはない。言われている「コロナ時代」に応じて前向きに変わることを考えたい。

   平時を前提にした海外頼みの仕組みも見直しが要る。コロナ禍では世界中でマスクの奪い合いが展開された。8割を中国からの輸入に頼っていた日本も一時、混乱した。中国の物流が停止して多くの工業製品、原料、野菜などの供給が滞った。自動車をはじめ製造業、建築業、商業などが資材や商品不足の影響を受けた。感染症が世界的に流行すると、必要物資が買い占められ、物流が止まり、さらに買い占めが進む。海外依存度の再評価とリスクの見直しが必要だ。

   食料自給率が低い韓国は、コロナの影響で輸入が途絶えた時の食料危機を想定し、対策の検討と訓練を官民で行っている。安全保障といえば武器や憲法に前のめりの安倍政権こそ、コロナ時代の対応策を真剣に議論してほしい。(司)

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