【4】川と芸術 作品に描かれた川の風景

  • 特集, 苫小牧市美術博物館企画展より 川と生き物
  • 2020年5月29日
ワッカナイ水源地(小嶋洋子氏撮影)

  本展最後のコーナーでは、苫小牧の川の風景や生き物を描いた芸術作品を標本や写真とともに展示している。その中から木版画と写真を展示したワッカナイ水源地について紹介したい。

   ワッカナイ水源地は苫小牧川の上流部、王子製紙の社有地内にある。ワッカナイとはアイヌ語で「飲み水のあるところ」という意味で、昔からきれいな湧き水があったことがうかがえる。明治時代に操業した王子製紙は、当時ここから紙の生産に必要な水を取っていたという。

   「6月 ワッカナイ水源地」は、苫小牧を代表する画家・能登正智(のとまさとし・1922~2001)による木版画。水たまりのような水源地の中に、恐らくニホンザリガニ、ハナカジカ、エゾイワナと思われる生き物が描かれている。いずれも上流部のきれいな川にすむ。特に湧き水の出る場所は冬でも水温がそれほど下がらず凍りにくいため、ニホンザリガニをはじめ多くの生き物が見られる。能登の木版画は、水源地にすむ生き物を的確に描写している。

   また、能登の作品の隣には、苫小牧の川の源流を多く撮影した小嶋洋子氏の写真を展示している。小嶋氏の写したワッカナイ水源地は、水底まで映り込んだ森の深い緑に吸い込まれるような写真だ。

   このコーナーでは川の自然をさまざまな切り口で紹介することで、自然の美しさや魅力を、視覚を通して訴える内容となっている。(江崎逸郎学芸員)

  (おわり)

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