道内7空港の運営権一括民間委託(空港民営化)の一環で、北海道エアポート(千歳市、HAP)が6月1日、新千歳空港で空港運営事業をスタートさせる。管制機能を除く国の所管だった滑走路や誘導路、駐機場などの運用を新たに担い、すでに受託している空港ビル管理と併せ、上下一体運営を始める。一方、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う航空需要の落ち込みで激減した旅客回復の見通しは立っておらず、テナント料や着陸料といった収益に影響。同社としては険しい船出となる
7空港は国管理の新千歳のほか稚内、函館、釧路、北海道管理の女満別、市管理の旭川、帯広。同社は2019年8月、北海道空港(札幌)を代表企業に17社で民営化のための特定目的会社(SPC)として設立された。
同年10月、国土交通省などと実施契約を締結。契約期間は49年までの30年間とした。今年1月15日には7空港の旅客ビル会社の株式を買い取り子会社化。7空港ビルの運営を一斉に開始した。
7空港への総投資額は30年間で、約4290億円(うち新千歳は約2950億円)。20年度から5年間で、約1000億円を7空港に投資し、機能強化を進める。
新千歳では国内線、国際線に次ぐ第3ターミナルビルを国内線ビル南側に建設し、国内線と国際線で共用。交通・観光センターでの2次交通や道内観光情報の発信強化を構想する。北海道オペレーションセンターによる、空港運用とビル管理を一体化した統合運用システムも構築する。
昨年8月に公表された事業計画では、新千歳の49年の旅客数目標値を17年度比1228万人増の3537万人と設定。路線数は同20路線増の65路線を目指す。
目標達成へ、ビジネスジェットの就航促進や輸出貨物増加の取り組み、未就航の長距離路線、アジア地方都市路線の拡充などに努める。
新型コロナの感染拡大で、4月の国内線の利用者数は前年同月比87・5%減の17万8259人となり、国際線も3月下旬以降、発着便のゼロが続く。今後、空港ビルや駐車場と空港基幹部分の上下一体運営を進める企業にとっては主要な収入源である着陸料やテナント料の落ち込みは大きな不安要素だ。
27日、苫小牧民報社の取材に応じたHAPの蒲生猛社長は、空港運営で得た収益を戦略的に活用し、地域振興につなげていく決意を強調。「七つの空港が一体となる。収益と情報、人の動きを地域の豊かさにつなげたい」と力を込めた。
新型コロナの影響については「いつまで続くかは分からないが、今夏の観光客の動向を注視している。来年の東京五輪までにはある程度回復してほしい」と語った。
空港運営事業は新千歳を皮切りに、10月に旭川、21年3月に残る5空港で開始する。