川にすむ昆虫といえば、何を思い浮かべるだろう。ゲンゴロウやヤゴなどだろうか。最も多いと考えられているのは、カゲロウ、カワゲラ、トビケラの仲間(以下、川虫)だ。川虫は生態系の中で大変重要な役割を担っている。
川の生態系を支えるエネルギー源の一つが河畔林(かはんりん)の落ち葉である。苫小牧の上流の川は山地の森林内を流れているため、毎年、膨大な量の落ち葉が川に注ぐ。その落ち葉を食べるのが川虫だ。直接葉を食べるもの、表面に生えたカビを食べるもの、他の川虫が砕いてさらに細かくなった落ち葉を食べるものもいる。豊かな森が広がる上流で川底の石や砂利をすくうと、100匹以上の川虫が捕まることも。これらの川虫は、ほかの大型昆虫や魚などの重要な餌となる。
川虫は主に早春に一斉に羽化し、空中を飛び回る。川の上にカゲロウの成虫の大群を見たことがある人もいるだろう。この川虫の成虫は鳥やカエルなど、陸上のさまざまな動物に食べられる。特にミソサザイという鳥は、秋から春にかけて餌の9割以上を川虫に頼っている。川虫は川の生態系の土台になるとともに、羽化によって陸上の生態系との橋渡し役にもなっている。
本展では川虫や魚、鳥、水草など川に関わる生き物たちの標本を展示し、それぞれのつながり合いも紹介している。
(江崎逸郎学芸員)