新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、北海道に発令されていた政府の緊急事態宣言が25日、解除された。苫小牧市民からは歓迎とともに、感染が続く現状に不安の声も上がる。事業者は「客足はすぐには戻らない」と長期戦を覚悟し、一部を除いて万全の感染対策を講じて営業再開に臨む方針だ。
市民に広がる歓迎と心配
市内桜木町の三澤伸吉さん(67)は道内で感染者が続く現状を踏まえ「時期尚早」と訴える。市内で外出する人が増えている現状にも触れ、「経済活動を再開させながら感染予防ができるような工夫が必要だ」と話した。
北光町の無職、平野登美子さん(84)は「ひとまずほっとした」と笑顔を見せた。この1カ月半は外出自粛を心掛けていたが「これからは少し外に出る機会が増える。マスク着用など感染防止に気を付けたい」と語る。
3人の子どもを持つ苫小牧市植苗の佐藤晶子さん(33)は「外出機会が増える時期だが、少し様子を見たい」と慎重に受け止める。道の駅ウトナイ湖内の物販店プレジールの経営も手掛け、臨時休館の影響も受けただけに「収束までは仕入れを減らし、電話予約でも対応したい」という。
感染防止対策万全の態勢で
1カ月半ぶりに営業を再開した苫小牧市柳町のスガイディノス苫小牧。映画館、ボウリング、ゲームコーナーの消毒作業やソーシャルディスタンス(社会的距離)対策など感染防止に細心の注意を払いながら客を迎えた。
映画館では非接触型の体温計で来場者一人一人の体温をチェックし、37・5度以上の発熱がある場合は入場不可。従業員はフェースシールドを着用。チケットには直接触れず目視確認で対応する。
それぞれのエリアでは、座席などの間隔を空けて密を防止。白石由樹総支配人(35)は「すべてのお客さまにマスク着用をお願いするなど、最大限の感染防止に取り組んでいる」と話す。
明徳町のタクシー運転手、帰山輝明さん(70)は「期待はあるけれど、客足が戻るには時間がかかりそう」と見通す。日勤帯は医療機関を受診する高齢者などの利用があるが、夜勤帯は売り上げが半減。感染が収束していないことにも触れ「節度ある行動も必要になる」と語る。
休業要請対象一部で営業も
政府の緊急事態宣言が解除される一方、道は独自判断でバーやカラオケ店など「3密(密閉、密集、密接)」を伴う店舗の休業要請を道内全域で継続しているが、一部で営業を再開した店舗もある。
市内中心部でバーを経営する男性は「政府の支援策を活用して休業することも検討したが、給付額が十分ではなく、先行きが見えない不安もあった」と再開の理由を語る。平日の来客はなく、週末もコロナ前の半分ほどだが「何とかやりくりはできている」と話す。
市内では同様の理由で複数のバーやカラオケ店などが営業しているとみられ、男性経営者も「ウイルス感染への不安もあるけど、仕方がない」と感染対策を進めながら営業を続ける考えを示した。