苫小牧市美術博物館で企画展「水と生命」が6月21日まで開かれている。写真や模型、絵画などで、市内を流れる川やそこに生きる生命について紹介している。同館の江崎逸郎学芸員が4回にわたって解説する。
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本展のテーマを「川」に決めた理由の一つは、昨年、川をよく知る方に苫小牧川の源流に連れていってもらったことだった。
苫小牧川の源流は人けのない山奥にある。支笏湖方面に車を走らせること約30分、さらに山地の林道を約15分進んだところで車を止め、枯れ沢(ふだん水の流れていない川の跡)を歩く。枯れ沢は火山灰の小石を敷いた道のようで、歩くたびに「シャリ、シャリ」という乾いた音が静かな森に響く。
突然、「サーッ」という音とともに枯れ沢の途中から水が湧き出す。本当に何も無かった道が急に川に変わったというほどの水の量。源流の川の水は細々と流れていると思っていたので、驚きとともに豊富な地下水の存在を感じた。
苫小牧の大地は火山灰が厚く積もっている。雨や雪は水を通しやすい火山灰に染み込み、長い年月をかけてゆっくり地中を移動する。そして水を通しにくい地層に当たると地下水を形成し、ある程度の量になると地表に姿を現して川となる。川の元となる水を蓄え、ゆっくりと流すことで川の水の量が安定し、川の生き物や私たちに恩恵をもたらす。そんな火山が造った自然の仕組みに、とても感動する。
本展の最初のコーナーでは「川と大地のつながり」として、川の源流やその姿を写真や特大の地形図で紹介している。※山地へは必要な許可を得て入林しています。
(江崎逸郎学芸員)
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午前9時半~午後5時。月曜休館。観覧料は一般300円、高校・大学生200円、中学生以下無料。