ゆのみ

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年5月25日

  本紙には、読者に参加してもらう欄が幾つかある。一つが第2社会面のコラム欄「ゆのみ」で、立場や年齢のさまざまな執筆者が仕事、趣味、身近な出来事などについてつづっている。

   創設は1981年5月1日。前日の紙面で「読者参加の紙面を一層充実していく趣旨から…」とお知らせして掲載を始めた。この時の執筆者は6人。1人が、宮沢賢治研究の第一人者で詩人の斉藤征義さんだった。昨年1月に惜しくも亡くなったが、今春、記念館と言える施設が苫小牧市王子町にオープンし、今も多くの人にしのばれている。

   そんなコラムの執筆者たちは1年ごとに交代し、ペンを取った人は39年間でざっと500人ほどになる。「書くのは苦手で…」という人もいるが、掲載が始まると多くの人に励まされ、意欲的になるよう。執筆中にやむなく住む土地を変えたり大切な人を失ったり、病気で入院する人もいる。なかなか書く気持ちになれない時なのに、「たくさんの人に読んでもらえるので…」と懸命につむぎ出された文章は感慨深い。

   今の執筆者は30日までとなり、来月からは新たな顔触れで始まる。読者から読者へ伝えられることは、心のひだに隠れて見逃されがちだったり日々の生活で忘れられがちな「大切なこと」が多い。それぞれが人柄をにじませて届けてくれる思いを、これからも皆さまと共に楽しんでいきたい。(林)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。