「シウキナ」▶2 食べる前に「フッサ!」

  • チキサニ通信, 特集
  • 2020年5月25日
白老町のポロト自然休養林で自生するシウキナ(エゾニュウ)=5月9日撮影
白老町のポロト自然休養林で自生するシウキナ(エゾニュウ)=5月9日撮影

 イランカラプテ(こんにちは)。先日、とある白老アイヌのエカシ(長老)と植物について話す機会がありました。エカシは「よく親父がシウキナを採ってきて、皮をむいて生で食べたもんだ。皮をむく時は、根元の切り口に小刀でこうやって十文字に切れ目を入れてから、自分の口の近くへ持っていって『フッサ!』と言ってから食べていた。子供ながらにどうしてそうするのか? その時は分からなかったけれども、まねしてやったもんさ…」と懐かしそうに語っていました。

 こうした、かつての体験に基づいたエカシたち先人の記憶を一つでも多く引き継がなければならないと、私は身の引き締まる思いを感じています。

 さて、シウキナとはアイヌ語で苦い草を意味し、日本語名はエゾニュウと呼ばれます。白老地方でも海岸線から山地まで見ることのできる野草で、夏には高さ2~3メートルほどまで成長し、先端に小さな白い花をたくさん付けるのが特徴です。アイヌ語が意味する通り、茎をかんでみると苦く、匂いはセロリに似ています。エカシによれば、それほど苦かったという記憶はなかったといい、比較的苦味のないものを選んで食べていたと思われます。

 また、エカシが語った「フッサ!」という言葉は、魔よけやおはらいのおまじないとして、病人の治療の際などにも使われました。病人にフッフッと息を吹き掛ける音が「フッサ!」に聞こえるからなのですが、食べる際にも使うのはシウキナの苦味を避けるおまじないであったようです。

 アイヌ民族はこの世に存在するもの全てに魂が宿り、特に生活する上で欠かせないものを「カムイ(神)」と呼び、尊んできました。したがって、アイヌ民族が最も大切にしたことは、さまざなな恵みを授けてくれるカムイに感謝し、来年も授けてくださいと祈りながら、野草の葉や茎を必要な分だけ採取するという考え方や姿勢です。

 私たちは野草を根こそぎ採取するのではなく、もう一度そのことを見直し、学ばなければいけないのではないでしょうか。

 (しらおいイオル事務所チキサニ・森洋輔学芸員)

 ※「チキサニ通信」は毎月第2、第4月曜日に掲載します。

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