「あれ、答えが違う。そっか。小数点のミスだ。よし、合ってる」。苫小牧日新小学校5年の山西柚乃(ゆの)さん(10)は、宮の森町の自宅で小数と整数の掛け算に挑んでいた。臨時休校前よりも家庭学習の時間を増やした。教科書の予習や、4年生で習い切れなかった国語の漢字練習、通信教育のタブレット学習など、1日1時間程度の勉強。学校から宿題で出される復習プリント10~15枚は1週間程度で終わってしまう。
5年生の新しい問題を解こうとするが、柚乃さんは「まだ習っていなくて分からない問題もある」と話す。高校生の兄、星空(そら)さん(15)に尋ねて解くこともあるが「学校だともっと詳しく分かるから、テストをやったら点数が下がりそう」と心配している。
勉強中でも同小2年の弟、咲空(さく)君(7)の様子が気に掛かり「集中できないこともある」と自覚。学校と家との学習環境を比べて「面白さが全く違う。みんなで笑いながら勉強して、それがないことが寂しい。学校に行きたい」と訴える。
2人とも毎日学習に取り組んでおり、父の寛範さん(42)は「すごく遅れた状態ではないかな、と安心はしている」と話す。ただ、柚乃さんは自分で計画を立てながら全教科に取り組むが、咲空君は国語が苦手で、好きな算数を中心に解いている様子で「勉強に偏りは感じる」と不安視する。
夏休みなどの長期休暇と比べて、学習方法に変化はないが「夏休みであれば他の子どもも、1学期で習った勉強が中心なはず。だけど、今は復習や予習に違いがありそう。その格差が心配」と指摘。他の学年に比べて学習に遅れが出るような「コロナ世代」にしないでほしいと願い、土曜授業や9月入学案にも賛成する。
子どもたちが工夫しながら家庭学習できるよう、市内の各学校も試行錯誤が続く。美園小4年1組は分散登校日に予習プリントを配り、笹渕光太郎教諭(38)は「まず自分で予習し、分からなかった部分を意識して授業を受けて」と期待する。
ウトナイ小5年2組も予習を宿題で課しつつ、西多俊教諭(40)は市販ドリルなどには「教科書を理解した上で取り組んで」とアドバイス。一方で宿題は復習にとどめる学校もあり、子どもを取り巻く環境の違いで、学習の進度などに大きな差が出ている。
市教育委員会の瀬能仁教育部長は「学んでいない分野がそのままになっている」と分析しつつ、長期休みの短縮による授業時間の確保などで補う構え。「休校続きで子どもたちができなかったところを補っていけたら」と強調するが「現状が続けば格差も現実になる」と危機感を募らせる。(高野玲央奈)
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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、苫小牧市内の小中学校で臨時休校が続いている。2月27日に臨時休校が始まり、4月にいったん学校を再開したが再び休校に。この間に分散登校も行われたが、学びやから2カ月以上にわたり、子どもたちの声はほぼ消えたままだ。21日から分散登校も拡大するが、子どもたちが学校に行けないことで、どんな問題が起きているのか。「学力」「生活習慣」「育児」をテーマに探った。