赤羽一嘉国土交通相は8日の閣議後会見で、白老町のアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」について、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、29日を目指してきた開業を当面延期すると発表した。新たな開業時期は未定。赤羽国交相は、緊急事態宣言が解除されれば、まずは6月中に地元町民向けの内覧会を開き、「状況が整えば開業に踏み切りたい」と強調した。
ウポポイは「大勢で歌うこと」を意味するアイヌ語。昨年5月施行のアイヌ新法に基づき、アイヌ文化について情報発信するため国直轄で整備された。政府は緊急事態宣言が発令された4月7日、当初開業予定だった同24日から5月29日に延期することを決めた。その後、札幌市など道内でも感染者が再び急増するなど「第2波」の動きを見せており、再延期を判断した。開業前に開催予定だった記念式典も延期し、新たな日程は改めて検討する。
赤羽氏は会見で「地元の皆さんが気持ちよく全国から客を迎える環境をつくらなければいけない。(ウポポイは)国の施設ではあるが、町民の施設でもあり、共に育てていきたい」と述べた。
ウポポイ開業の再延期に地元白老町の戸田安彦町長は「道内の新型コロナウイルス感染状況を踏まえると、やむを得ない。感染防止対策をしっかりと行い、安心して開業できる環境が望ましく、町としても国に求めてきたところ」とし、「今のところオープン時期が見通せないが、国や道と情報を密にしていきたい」と述べた。
北海道アイヌ協会の加藤忠理事長も「現状を考えると、再延期は致し方がない。ウポポイの職員はアイヌ文化の伝え方の質を高める準備期間として、開業までの時間を有効に活用してほしい」と話した。
ウポポイを管理運営する公益財団法人アイヌ民族文化財団(本部札幌市)は「感染状況を踏まえて国が判断した延期に対応し、オープンに備えアイヌ文化紹介の活動に磨きを掛けたい」としている。