一人の不幸も見逃さない―。そう心に誓い、苫小牧市内の山手地区で民生委員・児童委員活動や住民組織の立ち上げに携わるなどし、地域で暮らす高齢者の見守り活動に取り組んできた。しかし、新型コロナウイルスは、地域内での支え合いの場にも影響。ふれあいサロンといった住民交流の場がなくなり、高齢者の孤立化が一層深刻となった。「今までとは違うやり方で、住民同士がつながり合える方法がきっとあるはず」。見守り活動の新境地を模索する。
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民生委員・児童委員を20年以上務め、2018年夏には住民有志による見守り組織「おせっかいおじさん・おばさんの家」を立ち上げた。山手北光町内会では福祉部に長く所属し、さまざまな立場から地域福祉に取り組んできた。
傘寿を超えてなお、毎日のように外出して近所の高齢者の相談事に乗るなどしてきたが、新型コロナでその生活が一変。不要不急の外出自粛の呼び掛けに応じて2月下旬、自宅にこもりきりの生活を始めた。
朝から晩までテレビ漬けの毎日。番組のほとんどが新型コロナに関する内容ばかりで、どんどんと気がめいっていった。家族との会話も減り、家事をするのもおっくうになった。精力的に地域内を飛び回っていた自分とは別人になったかのようだった。
「このまま年老いていくのだろうか」。絶望的な気持ちで日々を送ったが、4月初旬のある日、ふとわれに返った。「家の中で一人、不安な時間を過ごしているお年寄りがいるのでは」。居ても立ってもいられなくなり、一人暮らしをする近所の高齢者に電話をかけた。相手の「久しぶりに人と話すことができた…」とほっとしたような声に、胸がいっぱいになった。
別の人に対しては自宅を訪ね、郵便受けに安否を尋ねる手紙を入れた。受け取った人からは「来てくれたんだね。うれしいよ」という電話がきた。地域の住民から「不安からのストレスで家族間のけんかが増えた」という相談も受けた。テレビから離れ自分が住むまちに目を向けると、新型コロナの影響で何らかの困り事を抱えながらも、声を上げられない人がいることに気が付いた。
感染拡大を防ぐため、町内会が毎月開催している地域のふれあいサロンは休止。住民が集まるような町内会行事も今年度は中止となった。それでも、住民が集まらなくても人とのつながりを実感できる方法があるのでは―と他の町内会役員らと一緒に知恵を絞り、町内会に加入する全世帯に見舞金を贈るという独自事業を発案。町内会ができる生活支援策と同時に、見舞金を届ける際の住民同士の何気ない会話を通じて独居高齢者の孤独感を和らげる考えだ。
「このような状況だからこそ、困っている人の声を逃さず、みんなで助け合えるような地域が求められていると強く感じる。自分もできる限り、地域の役に立てるように頑張りたい」。言葉にひときわ力を込めた。
(姉歯百合子)
(おわり)